岐路に立つマラソン大会と地域活性
近年、地方創生が注目を集める中で、スポーツイベントが地域の発展に与える影響が注目されています。その中でも、マラソン大会は地域にさまざまな効果をもたらすことが知られています。
マラソン大会が地域にもたらす影響
マラソン大会がもたらす効果には、主に以下のようなものが挙げられます。
<地域への経済的波及効果>
大会には多くの参加者や観客が訪れ、これにより地域のホテル、飲食店、小売業などが活気付き、地元の事業者が収益を上げ、地域全体に経済的波及効果が生まれます。
兵庫県立大学地域経済指標研究会の発表によると、第10回神戸マラソン大会(2023年開催)では兵庫県内で79億円もの経済波及効果があったとされています。
(引用:兵庫県立大学地域経済指標研究会、「第 10 回神戸マラソンの経済波及効果を推計」、https://kobe-marathon.net/2023/upload/10th_economic.pdf)
<観光振興>
マラソン大会は観客や参加者を引き寄せ、地域の観光振興に寄与します。美しい風景や地元の特産品、文化などがマラソン大会を通じて広く知られ、観光業界に活気をもたらします。
<地域資源の活用>
マラソン大会が開催される際には、地元の公園、道路、施設が活用されることがあります。これにより、地域のインフラや資源が再活用され、地元住民もその利便性を享受することができます。
<地域ブランドの構築>
マラソン大会は地域の特産品や文化を紹介する場としても機能します。これが成功すると、地域ブランドの構築に寄与し、地域のアイデンティティを高めます。
このようにマラソン大会は地域に様々な影響をもたらし、大会自体が賑わいを創出する場や機会となります。
岐路に立つマラソン大会
そんなマラソン大会も昨今は岐路に立たされています。
2007年に開催された東京マラソンをきっかけとして、日本国内でマラソン大会の数は急激に増加しました。しかし、近年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて大会が中止になったり物価の高騰の影響による参加費の増額が参加者の足を遠ざけたりと、開催自体が危ぶまれる、あるいは開催をしても見込んでいた参加者数が集められないという事態が起き始めています。
例えば、東京マラソンはコロナ禍前の2019年大会では国内からの参加費が10,000円でしたが、2024年大会では16,500円と1.6倍にも増えています。
「コンセプト」は何か?
大会数が増え定員割も散見される近年のマラソン大会では、大会のコンセプトを明確にする必要があるのではないでしょうか。一言にマラソン大会といっても楽しみ方は様々で、以下のようなものが挙げられます。
<記録更新による達成感>
目標を達成することで得られる満足感は非常に大きく、特にフルマラソンなどの長距離レースでは完走すること自体が大きな達成感を伴います。
<地域性を感じられるエイド>
マラソン大会ではエイドとして地元の特産品を使った料理やドリンクが提供されることが多く、エイドを通して開催地の地域性を感じるのも楽しみ方の1つです。
<普段走ることができない道を走る>
マラソン大会は様々な場所で開催されるため、美しい景色や観光名所を楽しむことができます。特に都市マラソンでは、その都市の名所を巡ることができるのが魅力です。
上記の他にも参加者によって様々な楽しみ方があり、どの大会に参加するか選ぶ際にも移動距離や参加費といった面だけでなく、走りやすさ、エイドの充実度、沿道の応援を含めたコースへの期待感、地域の観光などあらゆる要素が影響してきます。
大会数が増え定員割れなども散見される中で地域へのポジティブな影響を最大化するためにも、他の大会とは違うコンセプトを打ち出し、差別化を図ることが望まれているのかもしれません。そして、このことはマラソン大会に限らず、他のスポーツイベント、ひいては地域活性化を目的とするあらゆるイベントに共通する課題ではないでしょうか。